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【不登校|親が変わったとき子どもは動く】「学校に行く」と決めるのは本当は子どもじゃなく、親だった

こんにちは、ねこまるです。
小学校で、発達障害児や特別支援学級児童の支援員をしています。

今日は「不登校の原因をどう捉えたらいいのか」「教員として何ができるのか」と悩んでいる先生に向けて、大切なお話を綴ります。

もしかしたら今、あなたのクラスにも「不登校」の子どもがいるかもしれません。
「どうして来られないんだろう」「何が原因なんだろう」と、不登校の背景を一生懸命考えてきたことと思います。
けれど、その問いの中に、“親のまなざし”という視点が抜けていることが、実は多くあるのです。

不登校の背景には、家庭での会話、親の表情、そして“親の心の揺れ”が大きく関係しています。
「学校に行かせるべきか、休ませるべきか」と揺れるのは、実は子どもよりも親の方が先だった。
不登校とは、子どもだけの問題ではありません。親の不安と希望が、子どもの行動に静かに影響を与えているのです。

この記事では、不登校に向き合う教員として、「学校に行く・行かない」という判断にどう寄り添うか、
そして“行かせる”という親の決断を強制ではなく「やさしさ」として捉えたとき、教員ができることを一緒に考えていきます。

「不登校」へのアプローチに迷ったとき、きっと心の軸になるヒントをお届けします。
ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

なぜ「不登校の原因」を探しても前に進めないのか

教員が「原因」を突き止めようとしてしまう理由

教師という職業は、常に「問題に対して解決策を出す」ことが求められます。授業づくりでも、トラブル対応でも、「原因→対策→実行」という思考回路に慣れているのです。だからこそ、子どもが不登校になると「何がいけなかったのか?」「どうすれば来られるようになるか?」と“原因”を突き止めようとします。

しかし、不登校はそう単純な構造ではありません。1つの明確な原因で説明できるケースは少数派です。むしろ、「複数の小さなストレスや要因が積み重なって起こる“心のグラデーション”」のようなものなのです。

不登校の子どもが語る“表の理由”と“本当の理由”

「お腹が痛い」「朝起きられない」「頭が痛い」など、子どもが語る“理由”は、表に出ている氷山の一角にすぎません。その背後には、

  • 「学校の空気が苦手」
  • 「友達との会話に疲れてしまう」
  • 「親が『早く行きなさい』と言うことがプレッシャーになっている」
  • 「家での雰囲気が重く、心が疲れている」

といった、“見えない部分”の理由が存在することも多いのです。

子ども自身も「なぜ行きたくないのか、よく分からない」と言うことがあります。これは、本人の中でもまだ整理がついていないことの現れです。

不登校の“原因探し”が、親と子の心を追い込むとき

「どうして来られないの?」「何かあったの?」と繰り返し聞くことが、親や教師の善意から出た言葉だったとしても、子どもにとっては“責められている”ように感じられることがあります。

また、保護者も「自分の育て方が悪かったのか」と自責に陥ることが多く、原因探しが親子の関係に緊張感を生むケースもあります。

だからこそ、大切なのは“今できること”に目を向ける視点です。子どもが今日、何をして過ごしたか。どんな小さな関心を持ったか。家で落ち着いて過ごせているか。

「登校するかどうか」だけではない、小さな「前に進むサイン」を見逃さない姿勢こそが、支援のスタートラインになります。

不登校の「支援」は、まず“親の心”を整えることから

「学校に行かせるべきか」と揺れる親の本音

不登校の子どもと関わるとき、支援の主な対象は“子ども”だと思われがちですが、実はその前に、親の心を支えることが欠かせません。

親は、子ども以上に葛藤しています。
「行かせた方がいい? でも無理させてはいけない…」と、頭の中で矛盾した思いがぶつかり合い、正解が見えないまま時間だけが過ぎていきます。

ある母親は、毎朝学校に電話をかけて欠席を伝えることがつらく、電話をかけるたびに「また休ませてしまった…」と自責の念に苦しんでいました。
そんなとき、担任がふと伝えた言葉──
「お母さんの安心感は、お子さんにもちゃんと伝わりますよ」──
が、大きな転機になりました。

その一言で、「私はまず、自分が落ち着かなければ」と気づいたと言います。
親の心が整うことで、子どもも少しずつ変化を見せ始めたのです。

不登校と向き合ううえで、教員が親に伝えてほしい言葉

  • 「焦らなくてもいいですよ」
  • 「できたことを一緒に喜びましょう」
  • 「戻ってくる場所は、ちゃんとあります」

これらの言葉は、状況を無理に動かすものではありません。
しかし、言葉の“温度”が高いほど、親の心はほどけていきます。

登校再開を促す前に、まず“親自身の肩の力を抜く”ことを大切にしてみてください。

支援の第一歩は「親への共感」から始まる

不登校支援は、親を味方にするところから始まります。

「子どもをどうするか」の前に、「保護者の心の安全基地」をつくること。

「今のままでいいんですよ」 「お子さんが笑っていることが、何よりの前進です」 「お母さんも、お父さんも、十分がんばっていますよ」

そんな声かけが、保護者を支え、家庭の空気を少しずつ温めていくのです。

「行かせる」という親の決断は、本当に“強制”なのか?

「行かせる=悪」ではないという視点

「無理に行かせるのはよくない」——これはもちろん正しい。
しかし、“行かせたい”という親の気持ちがすべて悪になるわけではありません。

親の「行かせたい」という想いの背景には、愛情や責任、そしてわが子の未来を心から心配する気持ちがあります。
たとえその言葉が強く響いたとしても、根底にあるのは
「どうかこの子に居場所を見つけてほしい」
「学びや社会性を育んでほしい」
という深い願いなのです。

こんな事例があります。

中1女子。不登校が3か月続いたあと、親が「午前中だけでも行こうか」と提案。 最初は緊張しながらも、登校後は担任との面談を経て、午後の授業にも徐々に参加できるようになった。

このように、“きっかけ”としての親の働きかけが、子どもの行動変容を生む場合もあるのです。

“行かせたい”親心の裏にあるやさしさ

「将来が心配」「社会性を育てたい」という思いは、プレッシャーではなく、愛情からくるものです。

ただ、「行きなさい」とだけ伝えると、子どもは自分の気持ちを置き去りにされたように感じてしまいます。
だからこそ、必要なのは
「一緒に方法を考えよう」
「無理はしないで大丈夫」
といった、子どもの気持ちと並んで歩くような声かけです。

「子どもを信じて背中を押す」ために教員ができること

親が「行かせる」という決断をするのは、決して軽い判断ではありません。その勇気を教員が受け止め、そっと背中を押すことが大切です。

  • 「決める勇気を応援します」
  • 「今の決断が、次のステップになります」
  • 「子どもの変化を一緒に見守ります」

こうした言葉は、親にとって心の支えになります。
支援の主役は子どもですが、それを支える親と教員も、常に連携しながら歩んでいくパートナーなのです。

不登校の支援に迷ったとき、教員がとれる7つのアクション

  1. 親の迷いに耳を傾ける
  2. 「登校できない」ではなく「変化を見守る」
  3. 「決断してもいい」と親に安心を届ける
  4. 「戻る場所はあるよ」と具体的に伝える
  5. 「できたこと」メモを共有する
  6. 校内チームで情報共有し、1人で抱え込まない
  7. 教員自身の心を守る“ゆるい支援の視点”

事例③

「朝、行くと言えば送るけど…」という親に対し、「おうちの方の“行こうね”が背中を押します」と伝えたことで、親が前向きな言葉をかけられるように。

「学校に戻る」は目的ではなく、“安心して選べる選択肢”に

「戻らせたい」ではなく「戻ってもいい」に変える

登校が“義務”になると、苦しくなるのは子どもも親も同じです。
だからこそ、学校が“安心して戻れる場所”であることが重要になります。

「戻らせる」ではなく、「戻っても大丈夫」という雰囲気づくりが、子どもの心のハードルを下げてくれます。

学校側から「いつでも戻ってきていい」「先生たちは待っているよ」という温かなメッセージが伝わるだけで、子どもや保護者の緊張は和らぎます。

こんな事例があります。

担任が「毎日連絡は不要」「席や配布物を残しています」と伝えたところ、保護者は“戻れる安心感”を持つことができた。

この“戻れる安心感”があるかないかで、家庭の空気感や子どもの心理状態は大きく変わります。

学校が“安全基地”としてあることの意味

「いつでも戻れるよ」「先生たちは待っているよ」という空気があることで、親子ともに心の余白ができます。

担任が「毎日連絡は不要」「席や配布物を残しています」と伝え、保護者が“戻れる安心感”を持てた。

という話を聞いたことがあります。

教員が「戻ってきたくなる空気」をつくるには

「不登校の子が登校できるようになる」ことだけを目指すのではなく、「登校してもいいと思えるような居場所」を整えることが支援の本質です。

  • 保健室・別室登校といった段階的なステップを案内する
  • 「今日はあいさつだけしに来てね」など、ハードルを下げた関わり方をする
  • 教室内に「その子の居場所」がいつでもあることを示す(席、ロッカー、名前などの保持)
  • 行事への参加も「全部」ではなく「一部」からでも歓迎する姿勢を見せる

子どもが「学校って、ちょっとなら行けそうかも」と思えるためには、学校側が“選択肢”としての柔らかさを持っておくことが大切です。

まとめ|子どもを動かすのは“親の安心感”、支えるのは“教員のまなざし”

  • 不登校の原因は「見えないところ」にあることも多い
  • 親が変わると、子どもの行動も少しずつ動き出す
  • 教員の一言が、親にとって「背中を押してくれる言葉」になる

今日、教員としてできることは小さいかもしれません。けれど、それは確かに「きっかけ」になる力を持っています。

あなたのまなざしは、きっと誰かの希望です。


最後まで読んでいただきありがとうございます。
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